5日間の荷物整理——
現代社会に埋もれている、
特別な暮らしの一片。
5日間の荷物整理——
現代社会に埋もれている、特別な暮らしの一片。
ある冬の日、フリーランスで音響の仕事をしている琴はフィリピンから一時帰国した昭一を空港で出迎える。ふたりの恋人関係は、昭一が海外へ渡ったことにより自然消滅。かつて同棲していた団地の一室も、今は琴がひとりで暮らしている。5日間の日本滞在のなかで、団地に置いていた自分の荷物を片付ける昭一と、これまで通りの生活を送る琴。しかし、あることをきっかけに琴に思わぬ変化が訪れる……。
監督を務めるのは、第43回ぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞した『転回』(2021)や、宮崎大祐監督、山西竜矢監督と名を連ねたオムニバス映画『テン・ストーリーズ』(2022)での3篇などで、これまで高い評価を得てきた岩﨑敢志。初長編映画となる本作は、助監督や録音部としても数多くの撮影現場へ参加する自身の経験も交えながら、フリーランスとして働く20代の姿をありのままに捉える。第24回東京フィルメックスでは、日本映画のなかから選りすぐりの作品を紹介する【メイド・イン・ジャパン部門】に選出された。 主人公の琴を演じるのは、高橋伴明監督『赤い玉、』(2015)でキネマ旬報ベストテンの新人女優賞第7位に選出されたほか、山本英監督『あの日、この日、その日』(2021/オムニバス映画「MADE IN YAMATO」)や、工藤梨穂監督『オーファンズ・ブルース』(2018)、第74回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門に正式出品された『オーガスト・マイ・ヘヴン』(2024)などで知られる村上由規乃。淡々とした口調のなかで時折みせる、優しさや動揺といった琴の心の機微を見事に体現している。 他者から見れば「なんの変哲もない時間」。本作では、その時間こそが「特別な暮らしの一片」であることを、少しずつ変化していく人間関係や生活の形とともに丁寧に描き出す。